最新の内閣府景気ウォッチャー調査結果についてのレポートを紹介します。
令和5年4月の景気ウォッチャー調査結果(東北分)
表A-東北の現状判断(季節調整値)
表B-東北の先行き判断(季節調整値)
表C-東北の現状判断(原数値)
表D-東北の先行き判断(原数値)
調査結果の概要
1.今月のDI※
季節調整値
(1)現状判断(3か月前との比較、方向性 季節調整値)
現状判断DIは「49.5」と4か月ぶりで前月を下回った。前月と比較し▲2.3ポイント低下した。
(2)先行き判断(2~3か月先の見通し、方向性 季節調整値)
先行き判断DIは「53.7」と5か月連続で前月を上回った。前月と比較し+0.7ポイント上昇した。
原数値
(1)現状判断(3か月前との比較、方向性)
現状判断DIは「52.1」と3か月ぶりで前月を下回った。前月と比較し▲1.6ポイント低下した。
(2)先行き判断(2~3か月先の見通し、方向性)
先行き判断DIは「53.7」と5か月連続で前月を上回った。前月と比較し+0.4ポイント上昇した。
※DI(Diffusion Index)について…50を基準とし、50を超えると景気が良い方向にあることを示す。
2.調査の概要
調査期間 令和5年4月25日~30日
回答者数 167/189名、回答率 88.4% (全国1,809/2,050名、88.2%)
3.特徴的と思われる判断理由(ウォッチャーのコメントから抜粋)
(1)現状判断理由
○「やや良くなっている」
(商店街)…売上は増えているが値上げによるものであり、利益は増えていない。
(コンビニ)…新型コロナウイルスの新規感染者数が落ち着いてきているため、人の動きが良くなっている。
(その他小売[ショッピングセンター])…新幹線を含めた鉄道利用客や観光客、ビジネス客の流れがかなり増えており、それとともに来客数も上向いている。
(高級レストラン)…物価高で苦しいものの、少しずつ動きが出てきている。客の購買意欲も上がっている。
(旅行代理店)…全国旅行支援の割引が終了したエリアは多いが、宿泊販売は大きく落ち込んではいない。ゴールデンウィークの商戦はほぼ終了となるが、夏商戦が新型コロナウイルス感染症発生前よりも早いタイミングで動き始めている。
(遊園地)…新型コロナウイルス感染症に対する規制の緩和と暖かさのせいか、来客数は春休みを中心に増加している。その後は通常に戻ったものの、前年比でも順調に推移している。
(美容室)…3か月前は来客数が前年比約87%であったが、前年比約94%になっている。良くなかった前年を割っているが、3か月前よりは回復傾向にある。
(食料品製造業)…人流が活発化し実店舗の売上は好調だが、コロナ禍において伸長したオンラインショップの売上が停滞している。また、マスク着用から解放された3月は売上が著しく増加したが、4月に入って落ち着いている。ゴールデンウィークに向けて一般家庭での支出を抑えているとも推測される。
(一般機械器具製造業)…受注量は少しずつ増えている。ただし、電気代や鋼材などの価格高騰により、都度、見積りを見直して客先に提出している。客先でも価格が決まっている製品があるため、容易に値上げ要求を認めてくれるところは少ない。
(金融業)…桜の開花が平年よりかなり早まったことで観光・小売業界に影響が出ている。しかし、観光イベントは新型コロナウイルス感染症発生前とほぼ同様に開催されており、県内外から観光客が訪れている。消費動向は上向いている。
(人材派遣会社)…大手企業を中心に採用を強化している動きがあり、求人数が急増している。
(民間職業紹介機関)…取引先企業からの人材不足の相談が増えている。
○「変わらない」
(百貨店)…新型コロナウイルス感染症に対する規制の緩和に伴って、外出機会やトラベル需要が増加しており、ファッションやコスメ関連商品は売上が伸びている。一方で各種値上げによる生活防衛感の高まりもあり、新型コロナウイルス感染症発生前までは回復していない。
(家電量販店)…引っ越し等の新生活需要は例年並みである。テレビ等の買換えは単価が上がっていないが、冷蔵庫や洗濯機は大型製品が売れている。売上は前年と同程度である。
(その他専門店[酒])…一般店頭販売は値上げの影響が出ているが、飲食店では来客数が徐々に戻っており、何とか前年並みに近い水準になっている。地方では都市部ほど人が戻っていない。
(観光型ホテル)…物価高騰の影響か、来客数の伸びは以前より鈍化している。
(通信会社)…桜の開花が平年よりかなり早く、外出する人が一気に増えた。そのため、家のテレビの視聴時間が大きく減少しており、テレビサービスの新規加入者がやや減少している。インターネットサービスは年齢問わず利用者がいるため、新規申込者数は横ばいである。
(設計事務所)…新規受注も発生しているが、案件数や受注平均金額が減少しており、相対的に大きな変化はない。
(住宅販売会社)…低価格帯のコンセプト住宅販売が上々のスタートを切っている。
(職業安定所)…資材、エネルギー価格高騰の影響で、建設業、製造業での求人数が減少している。一方、市中の観光客や買物客の増加を背景に、宿泊業、外食産業での求人に明るさがみられる。
○「やや悪くなっている」
(一般小売店[医薬品])…4月はほとんどの商品が値上がりし、売上は前年を割っている。桜の開花が例年より早く、花見が早く終わったため、人の流れも止まっている。
(スーパー)…来客数は前年比95.7%と前年を割っている。週末、特に土曜日が厳しく、卵の不足と価格高騰で特売ができない環境にあるため、来客数が大幅に減少している。
(乗用車販売店)…物価高騰の影響が少なからず出ている。家計の負担が増しているため、車両の支払額を抑えたいということで商談の保留や買い渋りが増えている。
(競艇場)…新規客も増えず、来客数が減っている。
(輸送業)…1月から売上の低迷が続いており伸びる気配がない。物価高騰により個人消費が伸びないことも原因の1つとみている。
○「悪くなっている」
(その他住宅[住宅展示場運営会社])…来場者数は前月比70%で推移している。行楽などに出掛ける人が多くなっていることが原因とみている。
(農林水産業)…水田等に散布する肥料が届いたものの、価格は前年の2倍近くにのぼるため、経営を圧迫している。
(土石製品製造業)…令和4年度の出荷量は過去最低を更新している。
(2)先行き判断理由
○「良くなる」
(人材派遣会社)…求人数の増加に伴い、求職者数の増加が見込める。
○「やや良くなる」
(コンビニ)…客の動きが新型コロナウイルス感染症発生前の状況に少しでも近づけば、景気は改善するとみている。
(乗用車販売店)…メーカーが国内需要向けに振り当て調整を続ければ、受注残から考えて、夏くらいまでは安定した収益が続くとみている。
(その他専門店[白衣・ユニフォーム])…新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が5類へ移行することにより、ますます人流が活発化すると期待している。これまでたまった鬱憤を晴らすかのようにイベントや祭りが開催されるため、それに釣られて景気も良くなるとみている。
(高級レストラン)…既に2~3か月先の予約がある程度入っている。
(旅行代理店)…これまで中止や縮小していた祭りやイベントが、早い段階で開催を決定しており、それに合わせた需要が活発化している。
(美容室)…当店でも単価的に厳しくなり料金改定をしたが、何もかも値上がりしている状況なので客離れもなく、大きな影響は出ていない。来客数も増加傾向にあり、前年比100%の境目まできている。
(設計事務所)…官公庁案件を含め、入札などが一段落し、ある程度の見通しが立っている。
(食料品製造業)…飲食店や土産の動きは活発化するとみている。ただし、光熱費等の高騰は、一般家庭では支出を抑えることにつながり、企業では経費の増加となる。人件費等の経費バランスを注視していかなければ、利益が生み出しにくい構造となる。
(経営コンサルタント)…新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が5類へ移行することが消費の後押しをすると期待している。
○「変わらない」
(一般小売店[酒])…消費者にとっては物価上昇が足かせとなっているが、来月には新型コロナウイルス感染症の感染症法の分類が5類へ移行するため、販売量の増加に期待している。しかし、再値上げされる商品が多くなっており、大きく状況は変わらないとみている。
(一般レストラン)…旅行者が増えることはプラス材料だが、いろいろなものが値上がりしているため、相殺されて低迷状態が続くとみている。
(農林水産業)…生産資材は3~5割程度値上がりしているが、値上がり分を生産物の販売価格に転嫁できないため苦しい状況は続く。
(一般機械器具製造業)…見積件数は増えつつあるが、新しい製品の案件が非常に少ないため、2~3か月後も変わらないとみている。
(広告業協会)…新型コロナウイルス感染症に対する規制の緩和により、企業の販促活動も活発になっている。しかし、景気の先行き不透明感が拭えず、規模を縮小する傾向もあり、新型コロナウイルス感染症発生前の業績に戻るには、まだ時間を要するとみている。
(新聞社[求人広告])…新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が5類へ移行することが好材料ではあるが、地方においてはそれほど期待できず、先行きは不透明である。
(職業安定所)…求人数が多い状況は続くとみている。ただし、労働力人口の減少による人手不足によるものであり、特に企業が好況という状態ではない。
○「やや悪くなる」
(衣料品専門店)…来客数は安定しているが客単価は上がっておらず、景気は横ばいである。物価高騰が続く可能性もあり買物に慎重さがみられ、先行きはやや悪くなるとみている。
(家電量販店)…客の消費動向は観光等に向いており、家電には向いていない。
(金属製品製造業)…受注量は堅調だが、光熱費の更なる上昇が予想されるため、利益の確保に苦労するとみている。
○「悪くなる」
(土石製品製造業)…官需、民需の受注減少に加え、電気代や資材価格の高騰もあり、厳しい状況が続く。
東北地域に関する解説は、当センターの責任でまとめたものです。 以 上
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