最新の内閣府景気ウォッチャー調査結果についてのレポートを紹介します。
令和5年8月の景気ウォッチャー調査結果(東北分)
表A-東北の現状判断(季節調整値)
表B-東北の先行き判断(季節調整値)
表C-東北の現状判断(原数値)
表D-東北の先行き判断(原数値)
調査結果の概要
1.今月のDI※
季節調整値
(1)現状判断(3か月前との比較、方向性 季節調整値)
現状判断DIは「54.0」と2か月ぶりに前月を上回った。前月と比較し+3.8ポイント上昇した。
(2)先行き判断(2~3か月先の見通し、方向性 季節調整値)
先行き判断DIは「49.6」と3か月ぶりで前月を下回った。前月と比較し▲3.7ポイント低下した。
原数値
(1)現状判断(3か月前との比較、方向性)
現状判断DIは「53.1」と2か月ぶりに前月を上回った。前月と比較し+1.6ポイント上昇した。
(2)先行き判断(2~3か月先の見通し、方向性)
先行き判断DIは「48.5」と4か月連続で前月を下回った。前月と比較し▲3.6ポイント低下した。
※DI(Diffusion Index)について…50を基準とし、50を超えると景気が良い方向にあることを示す。
2.調査の概要
調査期間 令和5年8月25日~31日
回答者数 171/189名、回答率 90.5% (全国1,837/2,050名、89.6%)
3.特徴的と思われる判断理由(ウォッチャーのコメントから抜粋)
(1)現状判断理由
○「良くなっている」
(農林水産業)…桃の収穫初期は価格が例年より低く推移していたが、お盆頃を境に回復傾向にある。
(食料品製造業)…祭りやお盆の帰省等で人の動きが良かったこともあり、売上は2けた伸長している。しかし、例年以上の暑さのため期待したほど売上は伸びていない。
(出版・印刷・同関連産業)…新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行によりイベント等が再開され、印刷物に動きが出ている。
○「やや良くなっている」
(商店街)…夏祭りが通常開催され、新型コロナウイルス感染症発生前のにぎわいが戻っている。観光客も増加し、景気がやや良くなっている。
(百貨店)…高い気温が続くなかで、外出機会も増え、夏の季節商材が活発に動いている。また、旅行者の土産や挨拶時のちょっとした手土産需要で食料品も好調である。お盆の時期には県外からの客も増えた。
(コンビニ)…来客数、販売量共に増加傾向にある。暑さが好影響を及ぼしているとみている。
(家電量販店)…前年同月比で販売数量が伸びている。電化製品の使用回数や使用時間が増えたことで、省エネ家電への買換えが進んでいる。省エネ家電への買換えに対する地域の補助金も後押ししている。
(乗用車販売店)…客の方からの新車商談の打診も多く、商談件数は前年比120%まで増加している。社内からも顧客の購入マインドが高まっているという話が出ている。
(観光型ホテル)…来客数は増加しているが、電気、燃料などの価格高騰により収益が思うほど伸びていない。
(都市型ホテル)…8月は宿泊者数が多く、インバウンド需要も増加していることから、目標売上を達成している。
(旅行代理店)…8月に入り、海外旅行は個人の受注が発生しているものの、団体では小グループの取扱が微増の状況である。大型案件の取扱までには至っていない。一方、国内旅行は個人が堅調に伸びているものの、団体は小グループの取扱が増加している。大型案件は依然として鈍化傾向が続いている。3か月前と比較すると海外、国内共に小グループの取扱増加により、やや良くなっている。
(美容室)…今までカットだけであった客がパーマやカラーをすることが多くなっている。人と会う機会が増えて、少しおしゃれをしようという意識が高まったとみている。
(その他サービス[自動車整備業])…売上、販売単価共に高水準を維持しており、景気が良くなっている。
(建設業)…民間大型投資案件の受注により、3か月前よりも景気は良くなっている。
(金融業)…夏祭り効果により人の動きも新型コロナウイルス感染症発生前の水準に回復している。観光関連、宿泊業では客足回復にマンパワーが追い付かないケースも散見される。
(公認会計士)…顧客の月次、決算状況から判断している。小売、サービス業関係の売上等業績は回復傾向にある。新型コロナウイルス感染症の分類が5類感染症に移行してから飲食関係も売上が回復傾向にある。製造業は部品不足等で売上が上がらず苦しい状況が続いている。全体としてはやや良い状況である。
○「変わらない」
(その他専門店[靴])…販売量は前年よりは良いものの、新型コロナウイルス感染症発生前には届いていない。物価高騰で客の財布のひもは固い。
(タクシー運転手)…夏祭りやお盆休みで宿泊施設はほぼ満室になっており、タクシーの利用者も多くなっている。
(輸送用機械器具製造業)…客先からの引き合いはあるものの、受注につながる件数が増えていない。
(学校[専門学校])…企業では人材が不足しており、専門学校に対する求人のピークを過ぎても問合せがある。
○「やや悪くなっている」
(一般小売店[医薬品])…夏祭りが4年ぶりに通常開催となり、人出も新型コロナウイルス感染症発生前に戻っている。しかし、連日の猛暑の影響もあり、来客数は前年より5%減少している。
(衣料品専門店)…猛暑の影響で来客数が伸び悩んでいる。
(その他小売[ショッピングセンター])…新型コロナウイルス感染症発生前の2019年比で売上は94%、来客数は86%となっており、3か月前と比較してもやや鈍化の傾向にある。特にファッションの動きが鈍く、最終セールをしてもなかなか購入には至らない。価格よりも自分が欲しい物を購入する志向の客が増えている。
(一般レストラン)…猛暑のため外に出ない客が多く、お盆を過ぎてから急激に来客数が減っている。また、客から電気代やガソリン代が高騰しているため、外に食べに行きづらいという話も聞く。
(通信会社)…8月に入り、夏祭りなどのイベントが4年ぶりに通常開催されている。外での活動が一気に活発化し、これまでオンラインだった業務もリアル開催に戻っている。このため通信サービスの新規加入者数の増加にややブレーキが掛かっている。また、携帯の動画配信サービス利用者が増え、大手携帯キャリアのインターネット格安パックの競争にも拍車が掛かっており、固定回線のインターネットサービス利用者の解約が増えている。
(遊園地)…猛暑日が続き、お盆休み期間の天気予報も猛暑で良くなかったため、屋外施設へは出控えられ、来客数は低調に推移した。
(一般機械器具製造業)…見積案件数の微減が続いている。
(輸送業)…8月の売上も前年比96%と落ち込んでいる。加えて、燃油費の高騰が続いており利益を圧迫している。燃料油価格激変緩和補助金は10月以降も続けるようだが、新型コロナウイルス感染症発生前までの水準には程遠い。
(人材派遣会社)…前年比でみた採用者数は、3か月前よりも若干悪化傾向にある。
(職業安定所)…新規求人数が前年同月比で減少している。原材料やエネルギーの価格高騰、物価高の影響で、建設業、卸売業・小売業で減少している。
(2)先行き判断理由
○「良くなる」
(商店街)…新型コロナウイルス感染症に収束感がみられる。商店街ではマスク着用者が少数派になり、人の流れが活発になっている。
○「やや良くなる」
(通信会社)…来月以降、新機種発売が予定されているため、需要は増えると予測している。しかし、端末価格が高騰しているため購入が控えられ、予測以下になる可能性もある。
(観光名所)…コロナ禍で外出を我慢していた反動もあってか、平日の客も増えている。この状況が続き、来客数が増加することを期待している。
(出版・印刷・同関連産業)…選挙関係、学校関連の印刷物が見込める。また、ポスティング需要が増えている。
○「変わらない」
(百貨店)…秋商戦に向けて様々な消費喚起策を打つため、現在の販売量は維持できるとみている。しかし、エネルギー価格を始め、物価の上昇はまだ続いており、今後季節の変わり目に、多くの消費者が一時的に財布のひもを締める恐れもある。
(観光型ホテル)…この夏は客の動きが良かったが、物価高の影響もあり秋の予約数は鈍化している。
(設計事務所)…官公庁の発注は一段落している。民間は物価高と働き方改革による工事期間の長期化により動きが鈍い。
(食料品製造業)…売上はまだ新型コロナウイルス感染症発生前までは回復していないが、人の動きが活発化しているため良くなるとみている。ただし、電気代や資材価格の高騰で収益面は厳しい。
(建設業)…生産能力が向上することは考えにくいため、現状の景気が続くものとみている。一方で、2024年度からの残業規制の建設業適用を見据え、選別受注を余儀なくされつつある。
(経営コンサルタント)…企業における人材確保・各種コスト圧力に対する対応の厳しさが増すと予想している。
(人材派遣会社)…コロナ禍からの回復でサービス業中心に回復基調にある。しかし、中国経済が高いリスクを抱えており、それによる製造業の停滞など、景況感に対して楽観できる状態ではない。また、物価上昇と所得のギャップ拡大も懸念している。
(新聞社[求人広告])…物価高が広告の動きに影響を与える状況は続くとみている。短期的に回復は期待できない。
(職業安定所)…人流回復に伴い、温泉地の宿泊施設の求人数が特に活発である。一方で、物価や人件費が上昇しており零細企業の経営がひっ迫する可能性も否定できない。
○「やや悪くなる」
(スーパー)…ガソリン価格、電気代の値上がりなどで生活コストが増加するため、食費の節約志向により買上点数が減少するとみている。
(コンビニ)…秋になり気温が下がれば売上の伸びは収まる。しかし、公共料金など経費が下がることはないため、利益は減少するとみている。
(一般レストラン)…物価の上昇に伴い、客の財布のひもが固くなりつつある。景気は緩やかに悪化するとみている。
(輸送業)…製造業の主要取引先は生産減が続いており、今後も期待できない。また、建設工事関連は先送り状態が続いている。輸出関連の取引先においては、相手国は中国が多く、中国自体の景気が落ち込んでいるなか、更に原発の処理水問題で水産物が輸入禁止となっている。他の品目に影響が及ばないことを願っている。
(広告代理店)…原料の価格高騰や円安などが消費意欲を下げている。景気はやや悪くなるとみている。
○「悪くなる」
(その他専門店[食品])…ガソリン価格の高騰や冬に向けて燃料費の負担が増すことで、財布のひもが固くなり、し好品需要はますます減少するとみている。
(農林水産業)…原発の処理水排出の直接的な影響はないが、ニュースでいたずら電話や風評被害のことが伝えられていることからも、国内消費、海外消費共に県産品の消費動向が鈍くなることを懸念している。
東北地域に関する解説は、当センターの責任でまとめたものです。 以 上
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