令和4年度事業 【自主事業】
東北圏における移動困難者・買物困難者対策としての 新たな移動支援サービス等に関する先行事例調査
社会インフラ調査報告書地域コミュニティ維持令和4年度地域交通
背景
- 東北圏の公共交通インフラは、一部の都市地域を除き充分に整備されていないことから、多くの地域住民の移動は自家用車に依存している。そのため、高齢化社会に対応した交通手段の確保や、利用者数の低下による公共交通の採算性・利便性の低下等が中心的な課題になる。
- さらに、過疎地域や坂の多い住宅地等においては、商店の撤退・廃業等により、高齢者を中心とした移動困難者・買い物困難者の問題が顕在化している。
- 一方、自動運転やシェアリングサービス等が生まれてきたことを背景に、モビリティを単なる移動手段ではなく、物流や流通を含めたサービスとして捉える考え方が誕生している。
目的
- 支援サービスを類型化し、現状と課題、および東北圏における展開可能性を整理するとともに、新たな技術やビジネスモデルの工夫等により事業の持続可能性を確保している先進事例を調査し、東北圏における移動困難者・買物困難者対策としての支援サービスのあり方について提言すること
概要
1.調査対象
- 移動困難者・買物困難者発生のメカニズムと原因に関する状況
- 買物困難者人口の将来推計
- 制度・行政の課題と近年の動向
- 移動困難者・買物困難者対策としての各種移動支援サービスの類型化、および現状と課題
- 全国の先進事例(11事例)
2.調査体制
「1」~「4」は日本経済研究所と共同で調査。「5」は活性研単独で調査した。
3.調査結果
- 東北圏では、人口減→地域交通の利用者減→採算性低下→インフラ減→利便性低下→自家用車依存拡大→さらに利用減という負のスパイラルが顕著。商店の撤退も多い。自動車が運転できないと買物困難者に陥る。
- 2045年には、都市部以外では人口縮小のために買物困難者数は増えないが都市部では増加すること、全ての自治体で人口に占める買物困難者の割合は増加することが推計された。
- 「商品を届ける」「店舗を届ける」サービスは民間、「店舗を作る」「家から出かけやすくする」サービスは公共による実施が多いことが明らかになった。「採算性」「利便性」「人手不足」といった共通する課題も浮かび上がった。
- 11の先進事例を現地調査し、課題をいかに克服し事業の持続可能性を高めているか、あるいは、なお克服しなければならない課題は何か等を明らかにした。
- 日本カーシェアリング協会:コミュニティ・カーシェアリング(宮城県石巻市)
- (株)ヤマザワ:とくし丸の移動販売(山形県山形市)
- NPO法人「気張る!ふるさと丹後町」:ささえあい交通(京都府京丹後市)
- NPO法人上小阿仁村移動サービス協会:こあにカー(秋田県上小阿仁村)
- (株)アイシン:チョイソコとよあけ(愛知県豊明市)
- 茨城県境町:自動運転バス(茨城県境町)
- JR東日本:気仙沼線自動運転BRT(宮城県登米市)
- NPO法人南外さいかい市:南外さいかい市 公設民営スーパー(秋田県大仙市)
- 丹波市:地域デザインから出発したオンデマンド交通の効果的導入(兵庫県丹波市)
- 大館市:大館版mobiプロジェクト(秋田県大館市)
- 庄内交通(株):巡回路線バスのコース・ダイヤ拡大(山形県鶴岡市)
4.提言(概要)
- 各自治体レベルで、移動困難者のきめ細かな把握が必要
- 住民アンケートなどに基づく、ユーザーニーズに基づいた支援サービスが必要
- まちづくりと交通政策を融合
- 自治体、事業者、住民の合意形成に基づく事業スキームの構築が必要
- 自治体・事業者等のマッチング機会を創出する
情報発信
- 当センターHP にて公開、およびプレスリリース(2023年4月5日)
- 電気新聞(2023年4月12日)、山形新聞(2023年4月27日)に掲載
- 会員企業(富士通様)へのプレゼンテーション(3月28日)、国土交通省「第三回ラストワンマイル・モビリティ/自動車DX・GX に関する検討会」における㈱アイシン様のプレゼン資料の中で紹介(2023年4月25日)
報告書
「東北圏における移動困難者・買物困難者対策としての 新たな移動支援サービス等に関する先行事例調査」報告書
- 全体版 :(PDF:31.4MB / 302ページ)