令和3年度事業 【自主事業】
外国人留学生の地域への就職・定着に関するインタビュー調査
調査報告書人口減少・少子高齢化地域政策・地域経済移住定住促進国・自治体の政策雇用・働き方令和3年度外国人留学生
背景
- 東北圏は、他地域に先駆けて少子高齢化・人口減少が進展し、将来的に産業の担い手不足が更に深刻化していくと予想されることから、新たな産業の担い手を確保することが喫緊の課題である。
- 昨今、新たな産業の担い手として女性やシニアの活躍が期待されているが、人口の自然減が避けて通れない現状を踏まえれば、将来的に産業の担い手が不足することは不可避である。
- そこで本稿では、新たな産業の担い手として期待される高度外国人材に着目し、その予備軍である、大学・大学院に在籍する外国人留学生の地元就職・定着の実態と課題を明らかにする。
- 来日する外国人留学生は増加している一方で、日本で就職する外国人留学生の割合は高くないことから、特に卒業時の地元就職・定着の取組みに焦点を当てることとしたい。
目的
- 東北圏における外国人留学生の地元就職・定着の実態と課題を明らかにし、その処方箋を提示することにより、地域の産学官関係者が外国人留学生の地元就職・定着に向けたアクションを起こす際の基礎的資料および検討材料とすることを目的とする。
概要
(1章)東北圏における外国人留学生の地元就職・定着の実態はどのようなものか
- 文献調査により、外国人留学生に関する国の統計データや外国人留学生の地元就職・定着に関する先進事例の整理・分析を実施。
(2章)東北圏における外国人留学生の地元就職・定着率が低い背景・理由はどのようなものか
- 東北大学が実施した外国人留学生やその採用企業に関するアンケート調査から主要課題を抽出したうえで、外国人留学生・採用企業・支援機関にインタビュー調査を実施。
(3章)今後望まれる対策は何か
- 関係者インタビュー調査の結果を分析したうえで、東北大学高度教養教育・学生支援機構キャリア支援センターの門間由記子特任准教授から協力・アドバイスを頂きながら、レポートを取り纏めた。次の2点を提言する。
- 課題解決へ向けた産学官のアクションの具体化とその着実な実行
産学官の各主体は、本調査の実態把握やインタビュー調査で明らかになった課題を踏まえ、以下のアクションを起こしていくことが重要である。
【経済団体のアクション】
・通年採用など4月一括採用に拘らない採用スタイルを奨励する
・経済団体から加盟企業・大学に働きかけ、①低学年時からのOB/OGとの交流機会、②OB/OGからリアルな就職活動経験談を聞ける機会、③長期インターンシップの機会を提供する
【企業のアクション】
・職域・業務内容が明確で留学生の専門分野を活かせるジョブ型採用を行う
・有償の長期インターンシップを提供する
・外国人留学生をどのように活用したいかを明確化し、採用戦略に落とし込む
【大学のアクション】
・コンソーシアムの枠組みを活用し、企業から大学・研究室を通じて留学生に採用情報やOB/OG情報が行き渡るような仕組みを構築する
・キャリア支援センターの外国人留学生専門窓口創設などにより機能を強化する
【行政・支援機関のアクション】
・外国人留学生の一般的なキャリア(母国・来日後の学歴・年齢層等)や在留資格制度等、外国人留学生に関する基本的な知識を経営者や経済団体向けにPRする
・外国人留学生に対し、自分たちで受け皿企業をつくる起業支援を実施する
・行政や支援機関がそれぞれもっている情報の一本化、共有化を進める
・継続性・連続性をもって取り組む主体を設置し、産学官の連携を形だけでなく実際に機能させる枠組みを構築する
- 東北・新潟の各県における産学官ネットワークの充実・強化
外国人留学生の地元就職・定着が進んでいる地域では、各大学が地域の自治体や経済界等と連携し、外国人留学生の地元就職・定着支援に取組んでいた。また、インタビュー調査では、大学と企業の情報共有をはじめとした産学官の連携を望む声が多く聞かれた。これらを踏まえ、提言1.のアクションをより実効性のある取組みとしていくためには、地域毎に産学官のネットワークをより充実・強化していく事が望まれる。その際、ネットワークにおいて特に継続性・連続性を持って取り組む「核となる組織」を中心にリーダーシップを発揮し、取組みを推進していくことが重要である。
情報発信
報告書
「外国⼈留学⽣の地元就職・定着に関する調査」報告書
- 全体版 :(PDF:3.97MB / 79ページ)