最新の内閣府景気ウォッチャー調査結果についてのレポートを紹介します。
令和5年10月の景気ウォッチャー調査結果(東北分)
表A-東北の現状判断(季節調整値)
表B-東北の先行き判断(季節調整値)
表C-東北の現状判断(原数値)
表D-東北の先行き判断(原数値)
調査結果の概要
1.今月のDI※
季節調整値
(1)現状判断(3か月前との比較、方向性 季節調整値)
現状判断DIは「48.5」と2か月ぶりに前月を上回った。前月と比較し+0.3ポイント上昇した。
(2)先行き判断(2~3か月先の見通し、方向性 季節調整値)
先行き判断DIは「46.4」と3か月ぶりに前月を上回った。前月と比較し+0.1ポイント上昇した
原数値
(1)現状判断(3か月前との比較、方向性)
現状判断DIは「48.2」と前月から横ばいとなった。
(2)先行き判断(2~3か月先の見通し、方向性)
先行き判断DIは「46.5」と6か月連続で前月を下回った。前月と比較し▲0.1ポイント低下した。
※DI(Diffusion Index)について…50を基準とし、50を超えると景気が良い方向にあることを示す。
2.調査の概要
調査期間 令和5年10月25日~31日
回答者数 171/189名、回答率 90.5% (全国1,828/2,050名、89.2%)
3.特徴的と思われる判断理由(ウォッチャーのコメントから抜粋)
(1)現状判断理由
○「やや良くなっている」
(一般小売店[雑貨])…朝晩の冷えこみが例年以上であり、冬物衣料の出だしが早まっている。また、物価上昇対策として、当市で地域通貨を全市民に配付したことも販売量上積みの一因になっている。
(家電量販店)…観光需要の増加が景気全体を押し上げている印象を受ける。家電製品も単価が上がっており、売上は前年並みである。客も物価が上がっていることを諦めている。買換え需要は底堅い。
(観光名所)…国内の予約数と振り客の数は変わっていないが、インバウンドが復活し来客数が非常に増えており、客単価もアップしている。数か月先の予約も埋まっている。
(公認会計士)…顧客の月次、決算状況から判断している。3か月前と比較すると、小売、サービス、飲食関係は売上等が少しずつ回復傾向にあり、業績が元に戻りつつある。製造業は人手不足、部品不足等で売上が上がらない状況である。建設関係は好調を維持しており、全体としての景気はやや良いと判断している。
○「変わらない」
(商店街)…商店街への来街者数はイベント等の開催により増加しているが、店舗の売上は物価高騰等により若干減少しており、景気は横ばいである。
(百貨店)…気温の低下とともに雑貨・衣料品を中心に好調に推移している。食料品は生鮮食品などが値上げの影響を受けて販売量が減少している。一部高額商品は値上げがあり駆け込み需要が発生している。
(スーパー)…値上げの影響で商品の単価が上がり、結果的に販売数量は減少したものの、売上は増加している。
(乗用車販売店)…新型車の発表で受注が増えると予想していたが、受注件数が伸び悩んでいる。今後出る新型車も来年2月以降の入庫のため受注は期待できない状況である。
(住関連専門店)…客は打合せではいろいろと検討するものの、予算ありきのため注文時には内容が縮小されてしまう。
(その他専門店[食品])…客は必要最低限のものしか購入しない。当地はインバウンド効果も限定的である。
(観光型ホテル)…全国旅行支援が終わり、物価高などの影響からか予約数が減っている。
(都市型ホテル)…外国人客が確実に増えているが、日本人客はやや鈍化気味である。
(旅行代理店)…円安と物価高の影響で海外旅行の予約状況に伸びがなく、3か月前とほぼ同水準で推移している。国内旅行もほぼ同じ状況である。
(タクシー運転手)…近距離客が多くなっている。自宅から近くのスーパーまでの買物客の利用が多い。
(通信会社)…有料放送サービスの契約者数は微増だが、低価格メニューの契約割合が圧倒的に多く、単価は低くなっている。インターネットサービスの加入者数は横ばいで推移している。
(美容室)…猛暑から抜け出し気候は良くなったものの、客は旅行などを控えている。
(その他住宅[リフォーム])…住宅設備機器は、暖房設備の温水ルームヒーターの交換と石油暖房器具の買換えが増えている。リフォームは、省エネ型の住宅リフォーム助成制度の期間終了に伴い、対象の工事が大きく減っている。
(農林水産業)…天候の影響によるロスが増えている一方で価格の見直しがあり、トータルでみると変わっていない。
(一般機械器具製造業)…新製品や設備投資などの話題が少なく、引き合いは少ない。同業他社でも忙しいところは少ない。
(電気機械器具製造業)…半導体関連の特にメモリ関係の顧客において、設備投資意欲がみられない状況が続いている。
(建設業)…建築資材の価格高勝が続いているため、受注に結び付かないことが多い。
(輸送業)…上半期の売上は前年比95%と落ち込んでいる。10月単月の見通しも前年比93%である。以前から延期になっている建設関連の動きが若干出てきたが、全体をけん引するまでには至っていない。
(金融業)…消費動向が堅調に推移している一方、企業の設備投資動向は活発化していない。経済環境を踏まえ、設備の新規導入や更改に踏み切れない企業が多いとみている。
(広告業協会)…10月に入っても気温が高いため、通常ならば冬物商戦の広告出稿が活発になる時期だが、手控えている企業も多い。広告業界の業績は前年比でマイナス傾向にある。
(人材派遣会社)…大手企業中心にコロナ禍で採用を抑えてきたことの反動による増員募集は一区切りがついた印象を受ける。採用要件で即戦力を求める求人の数が増加している。結果的に書類選考通過率などが低下している。
(新聞社[求人広告])…求人広告の掲載件数に大きな増減はない。業種により人手不足と求人活動の活発化はみられるものの好況感はない。一般広告活動においても特段活発な動きは見られない。
○「やや悪くなっている」
(衣料品専門店)…衣替えで、今まではスーツだったものがジャケットや軽く羽織れるビジネスカジュアルに変わっている。来客数は変わらず、単価が上がりにくい商品に購買が移っている。
(職業安定所)…9月の新規求人数は前年同月比12.5%減少、6月比14.6%減少している。建設業においては、原材料価格の高騰から着工を延期するケースがあり、関連する他業種への影響が懸念される。宿泊業においては、物価高から学校関係以外の団体旅行、宴会の予約が落ち込んでいるという声を聞く。製造業では自動車関連、通信機器関連の受注が好調を持続しており、生産・在庫調整を行っていた事業所からの求人数が増加に転じている。
○「悪くなっている」
(コンビニ)…商品の値上がりが客に影響を与えている。客は目的買いだけで衝動買いはかなり減っており、売上に相当響いている。
(その他小売[ショッピングセンター])…7月は新型コロナウイルス感染症発生前の2018年比で売上102%、来客数100%であった。今月は同じく2018年比で売上95%、来客数89%となっており、3か月前を下回っている。なお、9月は2018年比で売上101%、来客数91%と、売上は維持できている。10月に入り来客数の減少が顕著になっている。
(2)先行き判断理由
○「良くなる」
(その他非製造業[飲食料品卸売業])…年末年始に人の移動を抑制するような障害がない。
○「やや良くなる」
(一般小売店[酒])…年末年始に向けて、今まで開催を控えるか縮小していた宴会需要が高まることを期待している。また、観光客向けの需要もこれまで以上に増えるとみている。
(その他専門店[白衣・ユニフォーム])…年末年始に向けて人の流れが活発になることが予想され、観光地や飲食店などは良い影響があるとみている。また、年末年始に新しい白衣や制服に替えるところもあるため期待している。ただし、長期予報は暖冬であり、期待している防寒着の売行きが心配である。
(タクシー運転手)…これから年末にかけて買物客や観光客の利用が多くなるとみている。特に週末、年末は温泉街まで利用する客が多くなるとみている。
(農林水産業)…りんごの出来をみると、景気は少し上向くとみている。紅葉が遅れていることもりんごの販売にとってはプラスに働く可能性がある。
(輸送用機械器具製造業)…年末に向けた動きが出ている。ストップしていた案件の再手配や新たな引き合いの増加など、良くなる傾向にある。
○「変わらない」
(百貨店)…重衣料の動きが鍵になる。今月鈍かった分後ろ倒しなることで、実売期の稼働が期待できる。
(一般レストラン)…物価が高いことが懸念材料である。景気は上向かないとみている。
(観光型旅館)…年末年始は団体客から個人客にシフトし単価は上がるとみているが、1月以降は再び下がると予想している。
(旅行代理店)…仕入原価の高騰が収益を圧迫している状況は変わらないとみている。
(建設業)…資材コストの増加はしばらく続くとみられ、受注量も横ばいで変わらないとみている。
(通信業)…年度末導入に向けた案件相談は増えているが、物価高の影響もあり、実際の契約にまでは至らないケースが多い。
(新聞社[求人広告])…景気動向改善に働く要素としては、インバウンドくらいしか見当たらないが、東北では海外旅行客の姿が以前より多少増えた程度で、大きくプラスには働いていない。それよりも、世界情勢の悪化によりエネルギー価格や物価への影響が大きくなっており、消費マインドは上がりにくくなっているとみている。
(職業安定所)…飲食・宿泊業における旺盛な求人活動は、当面継続するとみている。
○「やや悪くなる」
(スーパー)…冬期間の暖房燃料費や電気料金、食料品値上げ等に対して家計をやりくりするため、食費を抑えることにつながる懸念がある。
(衣料品専門店)…今後ビジネススタイルがカジュアル化することで、スーツが売れなくなることを心配している。また、ブラックフライデーや初売りなどイベントは盛り上がるが、平時は客が動かないという状況になることを危惧している。
(食料品製造業)…コストの増加が収益をかなり圧迫するとみている。為替も再び円安基調になっており、更なるコスト増要因になりかねない。
(金融業)…消費動向は年末年始に向かって盛り上がりを見せる時期だが、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザの流行予測、中国向け輸出関連業種の減収、ホタテ稚貝の大量死等異常気象の影響など、先行きが不透明ななかで懸念材料が多い。
(人材派遣会社)…ウクライナに続きイスラエル情勢などの地政学的リスクの高まり、インフレの影響による消費減退など不安要素が多く、足元の景況感も減退している。求人の動きもアフターコロナの立ち上がりから鈍化傾向にあり、全体的に様子見ムードである。
○「やや悪くなる」
(コンビニ)…気温が下がってきて来客数も徐々に減少している。特に週末の落ち込みがひどいため、これから厳しくなるとみている。
東北地域に関する解説は、当センターの責任でまとめたものです。 以 上
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