最新の内閣府景気ウォッチャー調査結果についてのレポートを紹介します。
令和7年9月の景気ウォッチャー調査結果(東北分)
表A-東北の現状判断(季節調整値)
表B-東北の先行き判断(季節調整値)
表C-東北の現状判断(原数値)
表D-東北の先行き判断(原数値)
調査結果の概要
1.今月のDI※
季節調整値
(1)現状判断(3か月前との比較、方向性 季節調整値)
現状判断DIは「44.5」と2か月連続で前月を下回った。前月と比較し▲3.1ポイント低下した。
(2)先行き判断(2~3か月先の見通し、方向性 季節調整値)
先行き判断DIは「46.6」と2か月連続で前月を下回った。前月と比較し▲1.1ポイント低下した。
原数値
(1)現状判断(3か月前との比較、方向性)
現状判断DIは「44.5」と4か月ぶりで前月を下回った。前月と比較し▲4.2ポイント低下した。
(2)先行き判断(2~3か月先の見通し、方向性)
先行き判断DIは「47.3」と2か月ぶりに前月を上回った。前月と比較し+0.4ポイント上昇した。
※DI(Diffusion Index)について…50を基準とし、50を超えると景気が良い方向にあることを示す。
2.調査の概要
調査期間 令和7年9月25日~30日
回答者数 174/189名、回答率 92.1% (全国1,822/2,050名、88.9%)
3.特徴的と思われる判断理由(ウォッチャーのコメントから抜粋)
(1)現状判断理由
○「やや良くなっている」
(タクシー運転手)…3か月前と比べて、県外からの観光客が増加している。インバウンドも多く、市内から空港に向かう利用者が多くみられる。
(遊園地)…上旬まで暑さが残ったが、その後は落ち着いて客が戻った。イベントの効果もあり、来客数は前年を上回っている。
(その他住宅[住宅展示場運営会社])…来場者数は減少傾向にあるが、成約棟数が前年比微増で推移している。
(金属製品製造業)…米国の関税政策の見通しが立ち、各社方向性が定まってきている。ただし、具体的なアクションはこれからとみている。
○「変わらない」
(商店街)…中心市街地はにぎわっていても、商店街周辺ににぎわいはない。
(スーパー)…値上げが続くなか、客が目玉商品を買い回っていることから、来客数は前年を下回っている。
(コンビニ)…夏は売上が良かったが、今月に入り徐々に落ちている。来客数は気温の低下に比例して減少している。
(乗用車販売店)…直近の新車受注量はおおむね前年並みである。しかし、前年と比較して販売価格帯が低く、収益性は低くなっている。また、生産台数も伸びておらず、収益に結び付きにくい構図になっている。
(その他専門店[白衣・ユニフォーム])…売上の減少スピードが増している。理由としては、労働人口の減少による発注数の減少、企業の廃業・倒産、ライバル企業やネット販売との競争激化等が挙げられる。インバウンドの恩恵もない。
(設計事務所)…継続して案件の引き合いがある。
(食料品製造業)…前半の動きはかなり悪かったが、後半は連休の動きが良く、前半の落ち込みをばん回している。しかし、前年までは届いていない。
(金融業)…夏の観光シーズンでは観光・宿泊・飲食を中心としたサービス消費が堅調だった。一方、賃上げ余力は企業規模による格差が大きい。対応に苦慮している中小企業も相応に存在しており、消費マインドの上昇を阻む要因となっている。
(広告業協会)…物価高が重くのしかかり、購買意欲以上に不安が先行している状況では、積極的な広報活動に予算を投入することは困難である。広告業界は低迷状態を脱し切れていない。
(経営コンサルタント)…商工業、サービス業共に原材料高や人手不足が続いている。
(人材派遣会社)…求人数は緩やかに増加している。ただし、労働力の減少に対して、採用で対処するだけでなく省人化などに取り組んでいる会社が一定数あるため、未経験者を中心とした採用の案件数は減り続けている。よって、採用数は横ばいである。
(求人情報誌製作会社)…企業が求人広告を新規掲載する目的が、既存業務の不足人員を補充するためであり、新規事業の立ち上げを目的とするものはみられない。
(その他雇用)…物価高により卸売業、小売業の採用意欲は低下している。建設業、製造業でも、資材価格や原材料価格の高騰による収益の減少を訴える声が多い。
○「やや悪くなっている」
(一般小売店[酒])…夏休みやお盆が終わり、消費者の節約意識が再び高まっている。また、物価高や天候要因を背景に、外食などを控える傾向も強くなっている。
(百貨店)…前半に暑い日が続いたため、秋物の立ち上がりが鈍い。食料品の更なる値上がりで買上点数はシビアになっている。ただし、イベント催事は好調である。付加価値を求める客が増えている。
(衣料品専門店)…9月に入っても気温は下がらず、秋物商材が全く動いていない。特に女性キャリア向けの商品は例年以上に苦戦している。
(家電量販店)…暑さが落ち着き、季節商材を夏物から冬物に入替えしつつセールを実施しているが、来客数、レジ通過客数共に前年とほぼ変わらない。全体的に売上は上がっていない。夏場にエアコンや冷蔵庫などを買換えた客が多かったが、買換えのための必要最低限の購入しかなく、単価も下落傾向にある。景気はやや悪くなっている。
(その他小売[ショッピングセンター])…売上は前年比101%、レジ通過客数は同99%となっている。外出需要が大幅に増えた前月からの反動か、財布のひもが一気に固くなった印象を受ける。レジ通過客数では食品業種だけが前年比100%となっている。売場では商品を1つずつ購入できるようにしたり、まとめて買うと安くなるようにしたり、客単価を上げるための工夫をしているものの、来客数の確保に苦戦している。
(高級レストラン)…今年度から毎月イベントを行い来客数の底上げを図っているが、予定どおりの集客ができていない。
(観光型旅館)…例年、紅葉シーズン前は客が少なめだが、今年は例年以上に少ない。
(出版・印刷・同関連産業)…印刷物の価格競争が激しい。
○「悪くなっている」
(一般レストラン)…9月は来客数が激減している。ランチタイム、ディナータイム共に客足が悪く、客がゼロの日も数日あった。景気はかなり悪い。
(土石製品製造業)…公共事業、民間事業共に発注工事が低調で厳しい状況である。
(2)先行き判断理由
○「良くなる」
(農林水産業)…米価は今後も高値で推移するとみられる。また、稲刈り中だが豊作の見込みである。
○「やや良くなる」
(観光型旅館)…繁忙期に向けて予約も順調に入ってきており、やや良くなるとみている。
(一般機械器具製造業)…省人化設備の引き合いが増えている。
(金融業)…インバウンド消費の好調維持や年末商戦の時期を見据えた個人消費の活況が期待できる。設備投資の面でも、人手不足を受けたソフトウェア投資やDX・物流等の中長期的な視点での投資拡大が期待できる。ただし、米を始めとする食品価格の高騰や米国の関税政策の不透明さが懸念事項である。
○「変わらない」
(百貨店)…物価高が改善するとは考えにくい。生活防衛意識は変わらないとみている。
(スーパー)…10月も商品の値上げがある。また、最低賃金の大幅な引上げと採用時給アップや既存スタッフの給与引上げ調整もあり、経費負担が増加するため、経営環境は良くない。一方、米国の関税引上げや米価の上昇等があり、消費への負の影響が懸念されたが、株価は堅調である。賃上げと併せて消費に良い環境となることを期待したいが、良くなる要因は見当たらない。消費行動に変化はないとみている。
(衣料品専門店)…ビジネスや旅行用途といったオケージョン需要はある程度見込める。しかし、残暑の影響により秋物需要が不安定であり、一気に冬物需要へと移り変わることが予想される。先が読みづらい。
(家電量販店)…客は買物に慎重になっている。景気が良くなる気配がない。
(乗用車販売店)…新車価格が高額になり販売台数が伸び悩んでいる。中古車の販売は以前よりも安定しているが、新車が計画割れしているため営業利益は変わらない。
(タクシー運転手)…2~3か月先はイベントの数が少なく、会場を訪れる人の利用は減る。しかし、忘年会シーズンに入るため利用者は増え、雪が降り足元が悪くなれば更に増える。
(電気機械器具製造業)…企業の通信機器関連の投資が好調で、取引先からの受注見通しは明るい。
(輸送業)…最低賃金が初の1000円超えとなった。過去最大の上げ幅となり負担が増している。米国の関税政策や物価高への対策など課題は山積しており、政治の安定化を期待する。
(人材派遣会社)…人材不足のため、事業展開が進まない企業が多くなる。米国の関税政策については、依然不透明感はあるものの直ちに大きな影響が出ることはない。景気は変わらないとみている。
(求人情報誌製作会社)…中小企業では、現在の事業の維持に注力する企業が多いという印象を受ける。新しく何かを立ち上げる動きは見られない。
(職業安定所)…先行きの不透明さから求人提出を控える事業所も見受けられ、新規求人数の減少は今後も続くとみている。
○「やや悪くなる」
(その他小売[ショッピングセンター])…10月以降も多数の品目で値上げがあることに加え、電気・ガス料金に対する国の補助金も9月で終了する。消費者は先行きが不透明ななかで、食費を抑える傾向がみられる。ファッションも機能性と価格のバランスが良い、長く快適に着られる服へのニーズがある。
(通信業)…サービス料金の値上げが影響し、解約する客が少なからず出るとみている。
(公認会計士)…小売業やサービス業関係は好調な企業が多いが、製造業、特に建設業は業績が悪くなっている企業が多い。2~3か月で業績が回復する見通しも立たず、全体的な景気はやや悪くなるとみている。
○「悪くなる」
(コンビニ)…今月も来月も値上がりする商品がある。上げ幅がこれまでよりも大きいことから、2~3か月先は消費がかなり抑えられ、景気は落ち込むとみている。
(その他専門店[酒])…新米の価格高騰による悪影響が予想される。政府の早急な対応が必要であり、外国産米の緊急輸入等の思い切った手段を行わなければ収拾が付かなくなる。また、米の増産等がいわれるなか、長期的な取組に関しても、具体的に方針や目標を示してもらわなければ、民間企業は対応が難しい。
東北地域に関する解説は、当センターの責任でまとめたものです。 以 上
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