2025年2月10日、一般社団法人ICTてらこや(以下、ICTてらこや)によるフリースクール「みんなのまなびば ぐるぐるの森」(以下、ぐるぐるの森)でのプログラミング体験事業が行われました。「地域活性化プロジェクト支援」による体験事業は、今回が最終回となります。プログラミング体験を通して、子どもたちの中にはものづくりの楽しさを知るとともに「自分も何かを作れる」という自信が育まれ、「とうほくプロコン2024」にもエントリーすることができました。子どもたちの大きな成長につながったICT体験事業について、振り返ります。
実施レポート
フリースクール「ぐるぐるの森」でのプログラミング体験 第8回
【開催日時】2025年2月10日
【実施内容①】「とうほくプロコン2024」に向けた作品づくりの振り返り
【実施内容②】新しく通い始めた児童へのプログラミング体験
実施内容① 「とうほくプロコン2024」に向けた作品づくりの振り返り
制作中だった「とうほくプロコン2024」に応募する作品を、子どもたちは冬休み中に自宅で完成させ、さらに作品を説明する動画も制作して、「とうほくプロコン2024」にエントリーしました。
完成した作品のタイトルは「リデュース・リユース・リサイクル 森のクリスマスツリー」。ぐるぐるの森がある盛岡市動物公園ZOOMOで拾ったどんぐりや松ぼっくりで作ったクリスマスツリーの中にLEDライトをセットし、距離センサーが反応するとクリスマスツリーが回ったりライトが点滅したりする仕掛けになっています。さらに、飾った後のどんぐりや松ぼっくりは動物たちのエサにできるように、はがしやすいグルーガンで接着しました。クマの展示場前に設置された「どんぐりポスト(※)」からヒントを得たと言います。普段から動物や自然と触れ合うぐるぐるの森の子どもたちらしい、自然とICTが融合した、温かな視点を感じられる作品となりました。
(※)園内のどんぐりを拾って入れると、クマのおやつになる。なお、このポストは2024年をもって設置を終えたが、ツリーで使用した木の実は飼育動物へ与えられることとなっている

子どもたちからこの作品のアイデアを聞いたとき、ICTてらこや代表理事・荒木義彦さんやぐるぐるの森代表・山内まどかさんは、子どもたちの柔軟なアイデアに驚くと同時に、このアイデアをかたちにしようと、一緒に考えながら作品制作に取り組んできました。残念ながら「とうほくプロコン2024」での入賞には至りませんでしたが、子どもたちからは「来年も挑戦しよう」と言葉が上がるなど、新しい目標となったようです。また、子どもたちが通う学校の先生方も、子どもたちの前向きな活動を知り、とても喜んでいたそうです。
荒木さんは、これまでの作品づくりに対する労いとして、子どもたちに工作キットを贈りました。
実施内容② 新しく通い始めた児童へのプログラミング体験
第8回目の体験事業では、新たにぐるぐるの森へ通い始めたという児童が初めてプログラミングに挑戦しました。山内さんやぐるぐるの森スタッフがサポートしながら、テキストに沿ってプログラムを入力。必要に応じて、荒木さんもサポートを行います。「子どもたちは『なぜこうなったのだろう』『どうすればできるのだろう』と考える過程で、より深い学びを得られます。こちらから教えるのではなく、まずはやってみることが大切です」と荒木さん。その言葉通り、児童はあっという間に「かわくだりゲーム」を制作しました。
初めてプログラミングに挑戦した児童が制作した「かわくだりゲーム」
「かわくだりゲーム」の制作を終えると、児童は自らフルカラーLEDの点灯に挑戦し始めました。山内さんも一緒に考えますが、分からないときは荒木さんにアドバイスを求めます。荒木さんはエラーの原因を教えながら、LEDライトとパソコンをつなぐ電源線や信号線の役割について説明します。集中しながらプログラミングを進め、ようやくイメージ通りの色や点滅で点灯させることができました。これからもプログラミングを続けたいという児童に、荒木さんも「これからも困ったことがあったらいつでもオンラインでサポートしますよ」と、今後もフォローしていくと伝えました。
試行錯誤しながら、ようやくLEDライトをランダムに光らせることができました
ぐるぐるの森代表・山内さんの振り返り
プログラミング体験や「とうほくプロコン2024」への作品づくりを通して、子どもたちの柔軟な発想力や対応力を目の当たりにし、とても驚きました。「とうほくプロコン2024」にエントリーしたことで、子どもたちには一歩踏み出すきっかけとなり、自信が育まれたと思います。子どもたちの家族の方々にとっても、子どもの成長を感じられる機会になったと感じています。今回はプログラミングに興味を持たなかった子どももいましたが、周囲の子どもに影響されて再度始める可能性もあると期待しています。これからも、私やスタッフとともに引き続きICT体験を続けていきたいと考えています。
ICTてらこや代表理事・荒木さんの振り返り
今後、ICTやAIはますます普及していくでしょう。その未来を担う子どもたちにとって大切なのは「クリエイティビティ」であり、クリエイティビティを育むのが「自分もものづくりができる」というマインドです。コンピューターやAIを使って計算やプログラムのコードは作れますが、それを使ってものを作るのは人です。地域の大人がICT体験できる場を作れば、子どもたちにものづくりのマインドを育む機会も増えていくはずです。大人もICT経験がないからとあきらめず、子どもと一緒に学ぶくらいの気持ちで、肩の力を抜いて挑戦してほしいと思います。
本支援の振り返り
これまでのプログラミング体験事業により、子どもたちには「自分にもできる」という自己肯定感や、挑戦する前向きな気持ちが育まれました。加えて、地域の大人に対してICTへの理解やリテラシーの向上が図られ、子どもたちのICT体験機会を創出する体制の構築に寄与することができました。
当センターでは、ICTてらこやが行うICT体験事業について、体験事業の空白地帯(未実施地域)の解消を目指して支援してまいりました。本支援を通じて、これまで体験事業が実施されていなかった岩手県においてICTに関する取り組みが根付き始めたことから、ICTを東北全体に行き渡らせる一助になったものと考えています。