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【REPORT|2024年7月16日開催】一般社団法人ICTてらこやによるフリースクール「みんなのまなびば ぐるぐるの森」でのプログラミング体験事業

ICTてらこやでは、ICTの体験機会を創出するとともに地域全体のICTリテラシー向上を図ることを目的として、これまで各地でプログラミング体験を行ってきました。2024年度は、2024年7月~2025年2月にかけて、盛岡市のフリースクール「みんなのまなびば ぐるぐるの森」(以下、ぐるぐるの森)を対象にプログラミング体験を行っていきます。今後ますます必要とされるICT・デジタルの技術を子どもたちに伝える体験の内容を、レポートします。​​
ICT:
Information and Communication Technoligyの略で、情報や通信に関する技術の総称のこと。
ぐるぐるの森:
日本で初めて動物園内に開校したフリースクールで、不登校またはその傾向がある子どもなど、さまざまな背景を持った子どもたちが過ごしている。


実施概要

​フリースクール「ぐるぐるの森」でのプログラミング体験 第1回

【開催日時】2024年7月16日​

【実施内容❶】プログラミング教材の説明​
プログラミング学習をする際に必要な手のひらサイズのコンピュータ「IchigoDake」と、キーボードやモニタをひとまとめにしたドッグステーション「IchigoDyook」の取り扱いなどについて説明。

【実施内容❷】「かわくだりゲーム」の制作​​
「IchigoDake」でプログラミングし、画面で動くゲームを制作。


ICTてらこやについて​

ICTてらこや 代表理事 荒木義彦さん(通称:親方)

 

プログラミング体験を始めたきっかけ​
代表理事の荒木義彦さんがICTに関する体験事業を始めたのは、約10年前。将来、ICT分野の人材確保が難しくなるという課題を知り、ICT人材のすそ野を広げるため子どもたちにプログラミングを学ぶ機会を提供しようと思ったことがきっかけでした。しかし、プログラミング体験を進める中で、子どもたちが抱える他の問題に気が付いたと言います。「今の子どもたちは『学んだことを活かし、何かを作り出す』という体験が少ないのではないか。スポンジのようにさまざまな知識を吸収する大切な時期に、『自分たちの手で何かを作り出せるんだ』という体験ができる環境を整えてあげたいと、デジタル人材の育成から体験事業に方向転換しました」。

ぐるぐるの森での活動​
豊かな自然に囲まれた「ぐるぐるの森」でのプログラミング体験は、「自然とデジタルの融合」がキーワードです。相容れないように感じられる両者ですが、落ちている枝にモーターをつけたり、松ぼっくりで工作をしたりと、想像力が働くことでよりクリエイティブな発想が生まれることが期待できます。今後はプログラミング教材「IchigoDake」を使いながら、子どもたちの「やりたい」に応える体験を展開する予定です。​

今後の目標について​
「子どもたちには、まずは『自分の手で作り出せる』ことを知ってほしい。そして、できる限り学んだことを利用して、手を動かしてみてほしい」と荒木さん。自分が作ったもので、誰かが喜んだり笑ったりする体験をたくさんしてほしいと話します。「ぐるぐるの森の一角に子どもたちがゲートを創るのもおもしろいですよね。机上の空論ではなく、この環境を活かして想像を働かせてほしい」。体験事業は始まったばかりですが、すでにさまざまな構想が浮かんでいます。​​


フリースクール「ぐるぐるの森」について​

ぐるぐるの森 代表 山内まどか​さん


ぐるぐるの森の概要
「ぐるぐるの森」は、日本で初めて動物園内に開校したフリースクールで、不登校またはその傾向がある子どもなど、さまざまな背景を持った子どもたちが過ごしています。ぐるぐるの森のテーマは、「自分を生きる。みんなで生きる」。子どもたちが平等な立場で、個性を活かしながら一つの目標を達成する「ティールエッセンススクール」を目指し、一人ひとりに寄り添ったサポートをしています。
ティールエッセンススクールとは:
上下関係のない平等な立場で、それぞれの個性を活かしセルフマネジメントしながらみんなで一つの目標を達成しながら学ぶスクールのこと。

プログラミング体験を始めたきっかけ
代表の山内まどかさんは、子どもたちが社会に出て自立することを目指し、将来役立つであろう技術や知識を身に付けてほしいという思いがあり、特にプログラミングやICTの知識は、未来を生きる子どもたちにとって必ず必要になると考えていました。その中で、SIA( Social Impact Accelerator、仙台市が主催する社会起業家育成プログラム)の受講生としてつながりがあったICTてらこやの荒木義彦さんの話を聞き、プログラミング体験を取り入れることにしました。​

これからの目標や期待について​
これから、ICTてらこやによる月に1~2回のプログラミング体験と、随時オンラインでサポートが行われる予定です。山内さんに今後の目標を伺うと「まずは楽しみながら、興味を持ってプログラミングにふれてほしい」と話します。「子どもたちには、周囲の自然に癒され、いろいろな人との関わりの中で、多くの体験をしてほしいと考えています」。


【実施内容❶】プログラミング教材の説明

動物公園入口近くのぐるぐるの森は、周囲の雄大な自然を見晴らせる開放的な空間となっていて、子どもたちもリラックスしている様子が伺えます。第1回目となるプログラミング体験は、プログラミング教材の「IchigoDake」の説明から始まります。「大人も一緒にやりましょう」と荒木さんが声をかけ、スタッフも一緒に挑戦することに。「今は大人が教えていますが、そのうち子どもが大人に教える逆転現象が起こるんですよ」​。

おおよその使い方を教えると、子どもたちは自由に使ってみる時間を持ちます。学校の授業では進捗を合わせなければなりませんが、一人ひとりのペースに合わせられるのもこの環境ならではの特徴です。​


【実施内容❷】「かわくだりゲーム」の制作​

子どもたちとひと通り操作を終えると、 「IchigoDake」で「かわくだりゲーム」を制作することにしました。「かわくだりゲーム」とは、敵などの障害物をよけながら川をくだるゲームで、下るスピードを調整したり敵のキャラクターを変更したりすることができます。​

初めは恐る恐る操作していた子どもたちですが、次第に「もっと動くスピードを早くしたい」「ここを押すとどうなるの」と声があがり始めます。「失敗してもいい。分からなかったら聞けばいいんです。そういう方法を身に付けて、大人になってほしい」と荒木さんは話します。​
次回は、子どもたちの様子を見てロボット操作に挑戦することにしました。また、ぐるぐるの森の入口にゲートを作る計画も始まろうとしています。​